20250905相手に合わせる知恵(使徒21:37-40)

20250905早天祈祷会

聖書:使徒21:37-40
題目:相手に合わせる知恵
賛美:439、445

説教:高曜翰 牧師

場所:大阪中央教会


1.本文解説

① パウロの一言と千人隊長の驚き

パウロが兵営の中に連れて行かれようとしたその時、彼は千人隊長に「一言お話ししてもよろしいでしょうか」と語りかけました。これはギリシャ語での問いかけでした。

この場面は、アントニア要塞に入る直前です。要塞の中に入ればパウロの身の安全は確保されます。しかし一度入れば、自由に外に出ることはできず、人々は彼を完全に囚人として認識することになります。だからこそパウロは、入る前に語りかける必要がありました。

千人隊長クラウディウス・ルシアは、パウロがギリシャ語を話したことに驚きます。彼はパウロを、数年前に暴動を起こした無学なエジプト人の首謀者だと思い込んでいたからです。そのエジプト人とは、紀元50年頃、自ら預言者を名乗り、人々をオリーブ山に集めて暴動を扇動した人物でした。歴史家ヨセフスによれば、約3万人(実際には3600人とも言われる)を集め、「自分の言葉でエルサレムの城壁が崩れる」と主張し、奇跡によってローマに勝てると煽動しました。しかしローマ総督フェリクスによって鎮圧され、400人が殺され、200人が捕らえられました。

千人隊長は、その首謀者をついに捕まえたと思っていたのです。


② パウロの自己紹介と伝道の機会

パウロは自分が誰であるかを説明しました。彼はキリキヤのタルソ出身のユダヤ人であり、その町の正式な市民、すなわちローマ市民でもありました。これは、彼が反ローマ的な暴動を起こす人物ではないことを示す重要な証言でした。

さらにパウロは、民衆に向かって話すことを許可してほしいと願い出ます。このまま要塞に入れば安全は守られますが、これほど多くの人々の前で語る機会は二度とないかもしれません。パウロはこの状況を、危機ではなく伝道の機会として捉えました。

彼が自分のことを説明したのは、誤解を解いて自分を守るためではありません。後に明らかになるように、キリストを伝えるための導入として、自分の証しを語ろうとしていたのです。

そして千人隊長の許可を得た後、パウロは階段の上に立ち、民衆に手を振りました。すると人々は静まり返り、彼はヘブル語で語り始めました。これは、熱心なユダヤ人たちにしっかり耳を傾けてもらうための配慮でした。


2.適用

① 相手に合わせて自分を用いる知恵

聖書はこう語ります。
「弱い人には弱い者になった。弱い人を得るためである。すべての人に対しては、すべての人のようになった。なんとかして幾人かを救うためである。」(Ⅰコリント9:22)

パウロは、自分の持っている力や能力を、相手に合わせて用いました。ローマの千人隊長にはギリシャ語で話し、ユダヤ人にはヘブル語で語りました。それは自分の身を守るためではなく、相手が理解できるように歩み寄るためでした。

その結果、驚くべき変化が起こりました。本来なら囚人として扱われるはずのパウロが、証人として語る機会を与えられました。また、あれほど騒がしかった群衆が静まり、耳を傾ける聴衆へと変えられました。逆境が、福音を伝える最良の機会へと変えられたのです。

イエスも同様でした。エルサレムにはイエスを捕らえて殺そうとする人々がいましたが、神の時に従ってエルサレムに上り、ご自身の命を惜しまずに語られました。その結果、人々は心を動かされ、すぐには捕らえることができませんでした。

私たちの教会にも様々なハンディキャップがあります。たとえば通訳が必要であったり、建物に階段があったりします。しかし、私たちが自分に与えられているものを、相手のため、福音のために用いるなら、それらはむしろ用いられる器へと変えられます。

自分のためではなく、相手のために、一人ひとりに合わせていくこと、それこそが神の知恵なのです。


3.まとめ

私たちは、自分の持っているものを自分を守るために使いがちです。しかしパウロのように、それらを福音を伝えるために用いるべきです。

相手に合わせて歩み寄るとき、主が助けてくださり、道が開かれます。
その知恵をもって、キリストの証人として歩んでいきましょう。

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